第17章 岐路(Ⅱ)
──何とも思ってなかったら、こんなにすらすら言葉が出てくるのに…。どうして、あの人の前だと何も言えなくなっちゃうんだろう。
再会してからずっとあたふたしている自分を思い出してうんざりしてしまう。
……そう。あの時だって。
"一緒に連れて行って"
その一言が言えていたら、何か変わっていたんだろうか。
素直に彼に言うことができていたら、ずっと一緒にいれたのかな。
「あたし……貴方に……」
一緒に連れて行って欲しかったの。
何も言わずに、置いていかないで欲しかった。
……今だって、そう。
周りを突き放して、誰も寄せ付けないようにして。
全部、一人で背負い込もうとしてる。
──あたし、貴方と一緒に行けるなら、どんな地獄だって平気なのに。
一度、視線を彷徨わせたけど、意を決してゾロの目を見つめ返す。無意識に視界が潤んで、まつ毛が震えた。
「……お願い、置いていかないで」
振り絞るように小さく声を出すと、ゾロはほんの僅かに目を見開いた。そのまま固まって動かなくなる。束の間の沈黙が流れた。
それを見て、あたしもぱちくりと目を瞬いた。
──ま、間違った。
そう伝えたかったのは彼じゃない。
昔のことを思い出していたからか。
ようやく再会できたからか。
自分でも驚くくらい気持ちが入ってしまったみたい。
一瞬で涙を引っ込めて慌てて表情を取り繕う。動揺したのを押し隠すために、無理矢理、ふふんと笑ってみせた。
「ガールズシップのオネーサンが教えてくれたの。こうすれば男はイチコロよって」