第17章 岐路(Ⅱ)
ローの指示で生捕にされたシーザーは、海楼石で縛られていた。
子供たちをあんな目に合わせて、閉じ込めていたひどいヤツ。あたし、この先何があってもコイツだけは好きになれそうにない。
だけど、チョッパーはそんな弱りきったシーザーの面倒を見ていた。
たとえ敵でも、傷ついた者がいるなら治療をする。それが彼のモットーらしい。…医者の鑑ね。
ローは我関せずといった様子で当たり前に匙を投げたのに。
麦わら一味の様子をしみじみと観察していると、
「しっかし、オメー。よく生きてこれたよなァ、グランドライン」
ウソップが隣で感心したような声を上げた。
それって…あたしのこと?
うん、目があったし、きっとそうよね。
あたしは口の中に詰め込んでいたスパイシーな香りのする海獣肉をごくんと飲み込み、大きく頷く。
「そりゃあ、何回も死ぬかと思ったよ」
会話が聞こえたらしく、ウソップの向こうからナミが口を挟む。
「それ、私も気になってたのよ。アウラあなた、航海術も知らないんでしょ?」
「うん、知らない。航海術どころか、使える知識なんてひとっつもないよ!!!」
「胸張って言えることじゃねェよっ!!…つーかそもそも、船も持ってねェのに、どうやって海を渡ったんだ?」
「うーんとね、いろいろ頑張ったの。海軍の船に乗せてもらったり、海賊船に忍び込んだり…とか。あ、捕虜になったこともあるよ」
あの時はさすがに大変だったなぁ。
今思えば、殺されなかったのは本当に奇跡よね。
「おま、危ねェことするなァ。ま、まあ、オレ様なら一人でも大丈夫だけどよ。なにしろコイツらがここまで来れたのはほとんどこのウソップ様のおかげと言っても過言では…」
「ハイハイ。分かったから」
ごにょごにょと何やら言い出したウソップを軽くあしらうナミ。それを見て笑いながら、あたしもしみじみと実感する。
本当、よくここまで生きて来れたよね。
「あとは……やっぱり運が良かったのかなぁ」
誰に向かって言ったわけでもなかったんだけど、左隣にいたゾロには、あたしのつぶやきが聞こえたらしい。お酒を飲みながら、あたしに視線をよこす。
「運がよけりゃ渡れるってもんでもねェだろ、この海は」