第17章 岐路(Ⅱ)
…どういうこと?
彼の言っていることが全くわからない。
なんで今、シーザーの話が出てくるの。
「今からでもどこかで降ろしてェところだが、流石にそんな時間はねェ」
「あ、当たり前よ!!あたし、絶対降りないからね!!しがみついてでもついて行ってやるんだから!」
恐ろしいことを言い出した彼にぎょっとして、慌てて言い張る。
降ろすだなんて、とんでもない。
何のために2 年も旅したと思ってんの。
──あたし、絶対に、この先に行かないといけないんだから。彼の向かう先に、必ず。
必死なあたしを見て、彼は諦めたように一つ、ため息をついた。
「…とにかく、おれのジャマだけはするな」
「だけど…!!」
こっちだって切実なんだから。
気持ちだけでも、伝えないと気が済まない。
「ローは、一人で抱え込みすぎなんだよ。…あなたがどこを見ているのか教えてくれなきゃ、隣に立つことすらできないのに」
不満気に、尚も食い下がるあたしを見て、ローはいよいよ面倒になったらしい。苛立ったように声を低めた。
「…言っておくが」
そして、少し間をおいた後、突き放すように言い放ったのだ。その痛烈な言葉を。
「お前を隣に置くつもりはねェし、今後、仲間にする予定もねェよ。はっきり言って足手纏いだ。……分かったら早く行け」
その時、ぷつん、と何かが切れる音がした。
あたしは何度、あなたに傷つけられればいいの。
そうやって突き放されるたびに、どれだけ心が痛んでると思ってるの。
もういい。
もう、知らないんだから。
「あ、そう。そんなに秘密にしたいなら、勝手にすればいい!!ローなんてもう知らない!!」
そう叫んで、あたしは彼を一人、船首に置いてきたのだった。