第16章 岐路(Ⅰ)
──それに。
隣に立つ仏頂面の男を見上げる。
あたし、今ものすごく嬉しいの。
…やっぱり。
やっぱり、ローはローだったから。
いつも完璧で。
できないことなんてなくて。
無愛想だし冷たいし、腹の立つことはそりゃたくさんあるんだけど。
だけど、いつでも結局、救ってくれるのは彼なのだ。
あの頃と変わらず、彼だけなの。
「あーー!!ちょっとあんた何泣かしてんのよ!!」
「…おれじゃねェよ。勝手に泣いたんだ」
ナミの責めるような声が遠くから響く。
ぐしゃぐしゃになって泣いているあたしの横で苦々しく呟くロー。
──あたし、貴方に再会できてよかった。
今、心の底からそう思うわ。
「…あなたが泣かせたんだよバカ」
あたしは涙を拭って、無愛想なその人を振り返る。そして、今日一番の笑顔を浮かべたのだった。
「ありがとう、ロー!」