第16章 岐路(Ⅰ)
「そんなことより!」
あたしが一人で頷いていると、ナミが突然大きな声をあげた。
「話したかったのは、モチャのことよ!チョッパーが診ているから今は少し落ち着いているわ。だけど、鎮痛剤で押さえ込めてるだけだから、長くはもたないだろうって…」
モチャね、モチャ…?
確か彼女は、キャンディを持って逃げて...。それで...。
反応が鈍いあたしを見て、ナミはもどかしそうに言葉を続けた。
「それで、トラ男はなんて…?」
──その時になってやっと、あたしは眠りに落ちる前の全てのことを思い出したのだった。
氷に漬けられたみたいに、心臓がヒヤリと冷たくなる。
あたし、何をしてたんだろう!
本当に眠り込んでる場合じゃないじゃないの!
さらに言えば、罪悪感を感じている暇もなかったのよ!!
急な頭痛なんて、そんなのなんの言い訳にもならない。
こんな大事なことをすっかり忘れていたなんて。
あたしはそのために、ローを探していたと言うのに!
「ナミ、どうしよう!あたしまだローに言えてない!」
真っ青になって、ナミの顔を見つめ返した後、あたしは居ても立っても居られなくなって、今度は己の足を使わずに瞬時に駆けた。
モチャのことを助けられるであろう、唯一の人の元まで。