第16章 岐路(Ⅰ)
「この戦場で爆睡かませるとは、ずいぶん図太ェ神経だなァおい」
「あんたほどじゃないわよ、ゾロ」
ナミがピシャリと言い返すけど、あたしはそれにも曖昧な表情を浮かべるしかできない。だって、あたし、彼に全部任せて逃げちゃったんだから。
「ゾロ、勝ったんだね。ありがとう」
彼のけろりとした顔を見ると、酷い戦いでは無かったみたいだけど、やっぱりお礼の言葉だけでは物足りない気がする。
「あの、あたし、全然役に立てなくて…ごめん」
俯き気味に言葉を繋ぐと、ナミがあっさり言ってのけた。
「何を言ってんの!!危ないことはウチの野郎どもに任せときゃいいのよ」
「てめェはちったァ闘えや」
「なによ、さっき二人組をやっつけたのは私じゃないの。ちゃんと見てた?」
「見てねェ」
「あんたねー!!」
目の前でぽんぽんと飛び交う会話。
2人のやりとりを見ていると、ちょっとだけ気持ちが浮上してくるのが自分でも分かった。
気にしてるのはあたしだけで、みんな何とも思っていないみたい。
みんなの役に立てなかったのは──みんなのことを守れなかったのは、あたしが思っているほど、いけないことじゃなかったのかも。
そもそもあたしをあてにしてなかった、ってのもあるんだろうけど。
どっちにしろ、このやり場のない罪悪感は自分の中で飲み込んだ方がよさそうだ。