第16章 岐路(Ⅰ)
1人でぐーすか寝てる場合じゃなかった。
どうして誰も起こしてくれなかったの。
「おれ様がシーザーを追い詰めたところを見せてやりたかったぜ!!こんな風にだなぁ〜…」
「ぎゃははは!!」
ウソップもルフィもふざけた調子で笑っているけれど、身体の至る所に生傷ができていた。さっきまではこんな傷、なかったはずなのに。それだけ戦いが激しかった証拠だ。
みんなが死闘を繰り広げている間、あたしだけが呑気に寝ていたと思うと、とてもじゃないけど一緒に笑うなんてできなかった。
かと言って、沈んだ顔をするのもなんだか違う気がする。一人複雑な思いを抱えていると、彼らの会話に割り込むように溌剌とした声が耳を打った。
「あんたたちうっさいわね、もうちょっと静かにできんのかっ!!って、アウラ?よかった目が覚めたのね!」
あたしに気づいて、にっこり微笑む。
「ナミ!」
「トラ男を探しに行くって言って飛んでったかと思ったら、逆にあんたが背負われて帰ってきたんだから、びっくりしたじゃない、もう!」
「…うん、ごめん」
「なんで謝んの。あんたは無事なんでしょ?」
「うん、元気なの。…元気すぎるくらい」
困ったように笑ってみせると、不思議そうな顔をしている彼女の後ろから、これまた知った顔がやってくるのが見えた。
「おーおー。やっとお目覚めか?」
そう言ってニヤッと笑うのは。
「ゾロ!」
さきほど、窮地を救ってくれた三刀流の剣士だった。