第16章 岐路(Ⅰ)
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…あれ?なんだろう。
温かい。
懐しい。
あたし、この感じ知ってる。
昔のことを思い出してたからかな。
あの頃のローの匂いがする。
ほら、だって…。
「あーーそうだ!!さっきからてめェ!!誰の了承を得てアウラちゃんを背負ってやがるんだ!!」
「…なんでコイツを運ぶのに、いちいちてめェに確認を取らなきゃいけねェ」
うん?
懐しい、この感覚…?
あたし、今どこにいる?
「当っったり前だ!!レディのことは全部おれを通すことになってんだよ!!」
「「「なってねェよ!!」」」
聞こえてくるのはサンジの声。
と、海兵たちのツッコミ?
なんかよく分かんないけど、サンジは怒ってるらしい。
「おい、いいからとにかく、アウラちゃんをこっちに!!」
「ムリだ」
そんなサンジに、駄々っ子みたいに返答してるのは。
「ムリって何だ。嫌だ、だろうが普通」
「ムリだ」
やっぱりこの声。
「……ロー?」
「起きたか」
あたしがむくりと顔を上げると、ちょうど目の前にあったトレードマークの帽子が少しだけ傾いた。後ろを確認してくれてるのが分かる。
あたしはなぜかローに背負われているようだった。
「あたし、寝てた?」
「寝てたっつーか…気絶だな」
気を、失ってたんだ。なんでだっけ。
大きなタンクがある部屋まで行ったのは覚えてる。
そこからどうなったんだっけ。
誰かと話した気がする。
何か嫌なことを言われて。
その後、知らない人の声も聞こえた…気がする。
「……うぅ………」
ああ。だめだ、混乱してるのかも。
あんまり上手く思い出せないや。
「痛むのか?」
「え?……あ、ううん。記憶がはっきりしないだけ」
「…そうか」
「昔の夢を見てたの。ローに会う前の、記憶の、夢」
「以前お前が言っていたやつか?」
「うそ、覚えてたの?だけど、ううん、それじゃないやつ。あの人は出てこなかったの。………どうして今まで忘れてたんだろう。あたし、昔はあんなに静かな子供だったのに」
言いながら、最後は呟きとなって消えた。