第16章 岐路(Ⅰ)
──結論から言うと。
小鳥は飛んで、あたしは落ちた。
ライが小鳥を放り出したあと、あたしの決死の大ジャンプの意味はなく、小鳥は必死に翼をバタめかせて宙を舞ったのだ。
一方、あたしは空中に踊り出し、そのままの勢いで海に落下した。
青い海に吸い込まれるように落ちながら、小鳥が飛んで良かった、と強がりじゃなくそう思った。
それからのことは、よく覚えていない。
空を舞う小鳥を見たのを最後に、あたしは意識を失ってしまったから。
海の中に沈んでなかなか浮き上がってこないあたしを、ライたちが心配して探しに来た。
彼らは何事もなかったかのように静まり返る海を見て、流石に不安になり、たまたま通りかかった漁師のおじさんに助けを求めた。
そして、その人があたしが海の底に沈んでいるのを発見してくれたの。
──あたしは海で泳げない、いわゆるカナヅチというやつだった。
シスターはぐったりして帰ってきたあたしを見て真っ青になった。だけどそのあと、ライからあたしが歩いたことと、話したことを聞いて、その目に涙を浮かべた。
もちろん、悪ガキたちはしっかりシスターに絞られた。ライはもう二度としないと泣いて謝り、シスターの怖さを再確認した事件となった。
…あたしはずっと寝込んでたから、これは全部、後から聞いた話なんだけどね。
とにかく、この事件で分かったのは、あたしは話すことと歩くことはできるけど、飛ぶことと泳ぐことができないってこと。
あと、あたしには"感情"がある、ということだった。