第16章 岐路(Ⅰ)
"高いところから落としたら、飛ぶんじゃねェ?"
さっき彼はそう言っていた。
高いところって、どこだろう。
高いところから落としたら、あの小鳥はどうなるんだろう。本当に飛ぶのかな。あんなに小さいのに?
飛べなかったら、どうなるんだろう…。
とても、とても高いところから落として。
飛べなかったら…?
──死ぬのかな。
あの鳥は、死んじゃうんじゃないかな。
「……だめ」
それは、直感だったと思う。
あの小鳥を大切にしないといけない、と思った。
守らないと、と。
じゃあ、彼らのことを放っておいてはだめだ。
死なせちゃ、だめなの。
だってあたしは何かを守るために生まれてきたんだから。
ただ、それだけのためにこの世に生を受けたの。
あたしは教会を飛び出して、彼らが走って行った方へ一心不乱に駆けた。
今までろくに歩いたこともなかったから、走っている途中で何回も転けた。だけど、そんなの気にならなかった。
ただ、"小鳥を助けないといけない"。
その想いだけが頭を占めて。
何度も転けて、転けるたびに傷を増やして、何度も何度も起き上がった。