第15章 存在理由
ローは何も言わずにあたしの足元にスッと視線を落とした。
視線の先には、モネにやられた傷。
それは、まだ生々しく血を滴らせていて。
「…チッ。余計な傷を付けられやがって」
自分の怪我でもないのに不機嫌そうなロー。
また怒られるのかとドギマギしながら、だけどあたしは、ここに来た理由をしっかり思い出していた。こくり、息を呑んで彼を見つめる。
「ロー、今すぐあたしと一緒に来てほしいの」
あたし、この人を連れていかないといけないの。嫌だと言われても絶対に。
「モチャが危ないの。お願い、一緒に来て。彼女を助けて!」
ローはあたしに視線を合わせて一瞬眉を顰めた。かと思うと、手に持っていた何かをその場に落として、こちらにやってくる。
「何を言い出すかと思えば…」
ローの感情が読めなくて心配になっていると、彼は何か思い出したように立ち止まった。そして、振り返り様にヴェルゴに向かって刀を振る。
途端に、小気味いいくらいスパッと切断されるヴェルゴの体。
「あんまりじゃないか、ロー。俺はもう動けないんだが」
それでもヴェルゴは気味悪いくらい平然としていて。
その様子にちょっとゾッとしていると、とうとう顔だけになった彼が急におかしなことを言い出した。
「ドフィ。何か話しておかなくていいのか?ローはお前の"探し物"を連れて行く気だぞ」
『…あァ、そこにいるのか?』
突然聞こえてきた声に戸惑う。
「だ、だれ?」
きょろきょろ辺りを見回しても、ローとスモーカー中将、ヴェルゴ以外は誰もいない。
だけど、聞こえてきた声はその誰のものでもなかったはずだ。
初めて聞く声、なんだけど。
なんだろう?誰かに似てる…?
答えを求めるようにローの顔を見つめてみる。
「只の死に損ないの言葉だ。気にするな」
『"気にするな"だと?フッフッフッ!!ロー、それは無理な話だ!!お前は何も知らねェなァ!!』
また、どこからか聞こえてくる謎の声。
ローはその言葉に少し気を取られたようだった。
歩みを止めて、また背後を振り返る。
あたしも声が聞こえてきた方を今度は注意深く見てみた。
すると、ヴェルゴの切断された腕の傍に、電伝虫が一つ落っこちているのを見つけた。ローがさっき落としたのってもしかしてあれ?