第15章 存在理由
「おい、聞こえてんだろジョーカー。"マリージョアの風"ってのは、どういう意味だ?…答えろ。アイツはお前の何だ?」
マリージョアの…ああ。
そうか、知りたかったのはアイツのことか。
図らずも俺がこの島に連れてきちまった謎の女。
"成人女性"と言うよりは"クソガキ"の方が近い。
そんな風貌をした銀髪の女。
親を探してるだか何だか言ってやがったが、それが嘘だということは初めから一目瞭然だった。
ただ、その台詞にも表情にも悪意は見えなかったから、船には乗せてやった。マリージョアで降ろすわけにもいかねぇから已む無く、だ。
危険を顧みず新世界に乗り出すのはそれなりの目的があるからだろうとは分かっていた。が、その時には、それが目の前の男に関する事だとは気付かなかった。
気付いたのはここにきて間も無くだった。女がトラファルガー・ローに会った時の反応は、明らかにローを知っているものだったからだ。
…いや、違う。逆だ。
その前に──女が船から落ちていく時に、ローが名を呼ぶのが聞こえたからだ。普段滅多にポーカーフェイスを崩さねぇ奴が動揺を表に出していやがったのは、俺からしてもそれなりに意外だった。
とにかく、それを見て、ローとあの女──アウラと言ったか、が知り合いなのは分かった。どんな因縁だかは知らねえし、興味もないが。
だが、もう一つ引っかかることは、どうやらヴェルゴやジョーカーもアイツのことを知っているらしいということだった。
何故だ?
何故、ヴェルゴは…いや、ジョーカーはあの女を追う?
ローが知らない情報を握っているらしいが、それは一体何だ…?
それに、ローがここまで執着する理由も分からねぇ。
能力者とは言え、鈍臭いだけの只の女に見えたが。
一瞬、惚れているのかと思ったが、コイツがそんな人間らしい感情だけで行動するとは思えねぇからそれは無いだろう。
もっと別の何か──それも、ヴェルゴやジョーカーが関係していることから考えると、世界政府に関わるレベルのとんでもねぇ何かがあるはずだ。