第15章 存在理由
俺がここに辿り着いた時、すでにローとヴェルゴは交戦中だった。研究所の構造を知らねぇせいで、余計な道草を食っちまった。
傍目からはヴェルゴが圧倒的優勢。
ローは防戦一方の戦いを強いられているようだった。
やはり七武海に入るほどの実力者とは言え、基地長ヴェルゴには到底及ばねぇのか。
そう思い、俺も加勢しようとした。その矢先だった。
ローはヴェルゴに向かって、何かを問いかけた。それは確か、"ジョーカー"に関する問いだった。
だが、対するヴェルゴの回答は無かった。
いや、正確には、答えたようだったが、俺にはその内容がいまいちよく分からなかった。無言のまま眉間に皺を寄せるローの反応からすると、それは奴が得たかった情報とも違うようだった。
そして奴は、面倒くせェ、と呟いたかと思うと、次の瞬間ヴェルゴをぶった斬りやがったんだ。
──敵を泳がせて、攻撃を喰らってでもコイツが得たい情報か…。
この物騒な部屋に関係あるのか?
部屋に入って真っ先に目に入った"SAD"とデカデカと書かれた巨大なタンク。これが何なのかは知らねぇが、いいモンじゃねぇ予感はする。
だが、ローがもう一度口を開いた時、奴が知りたかったことはこの部屋に関することじゃねぇことが分かった。
奴はヴェルゴの傍に身を屈め、電伝虫を拾い上げる。そして向こう側にいるだろう相手に向かって、こう聞いた。