第15章 存在理由
手のひらが熱い。
いや、あたしの体全部が熱い。
血管という血管がどくどくと脈打って、流れている血が沸騰しているようだった。
体内で熱の塊が轟々と吹き荒れる。
凶暴で、激しい性格の生き物。
それを体の中で飼っているみたい。
外に出よう出ようとする力を必死で押し込めて、手の中に集中させる。
そして、その手のひらをぐっと地面に押し付けてみた。まるで、手を通して地面に流し込むように。
すると。
どろりとした熱い何かがあたしの体から地面に移動した。かと思うと、地面に伝わった熱は一瞬で膨大な威力を伴って渦を巻く。
そしてそれは瞬く間に、辺りを吹き飛ばさんばかりの豪風になった。
巨大な竜巻はモネが降らせた雪を呆気なく霧散させる。氷の結晶が辺りに散って、なかなかに幻想的な光景と言えなくもなかった。
とにかく、これで彼女は逃げも隠れもできないはずだ。
1人満足気に頷いていると、
「やるじゃねェか、白いの」
「白いのって…それ、あたしのこと!?あたしにはアウラっていう名前があんの!!」
吹き荒れる豪風に動じず不敵に笑うゾロ。
あたしの抗議なんて聞いてないみたい。
麦わらの一味ってどうして普通に名前を呼んでくれないんだろう。
ゆきんこだの、天使だの。
お次は、"白いの"??
勝手に変なあだ名ばっかりつけて。
思わず頬を膨らませてから、あたしはある人の異変に気づいた。
「あなた、本当に彼の…?そんなはずない…性質が違うわ」
さっきまでの妖艶な美女はどこへやら、雪の中から姿を表したモネはもはや人の形をしていなかった。
鋭い牙を剥き出しにして、鬼の形相であたしを睨みつける。
「あなたはいったい…?」
初めて、あたしに対して驚きと、少しの警戒を感じているようだった。モネの豹変ぶりと、その呟きが理解できなくて思わずたじろぐ。
そ、そんなに怒らなくてもいいと思うんだけど。
だって、あたし、あんたに怪我させられてるのに。