第15章 存在理由
えっと…だけど。
今の言葉って、つまり。
もしかして、危ないからどいてろってこと?
今のはこの人なりの優しさだった、の??
ちょっと困惑してその背中を見つめていたんだけど、あたしは言われた通り、彼に任せて後ろに下がることにした。
歩けると豪語したものの、力を入れるとなかなか足が痛んだ。だから、座ったままずりずりと移動する。
言い方はキツいけど、彼が正しい。
きっと、あたしがいても足手纏いになるだけだ。
足から流れ出て地面にシミを作っている赤色を眺める。
さっき、モネに掴まれた足。
鋭い爪が肉を抉って、どろどろと血が滴っていた。
何にもできなかった。
傷つけられても固まるばっかりで、逃げることすらできなかった。
結局、あたしはこの世界で生きていくにはまだまだ実力が足りないってことだ。
なんとも言えない気持ちでいると、
「アウラ!何やってんのよあんたはもう!1人で突っ走るからじゃない!!」
「ご、ごめんなさい…」
駆けてきたナミに子供のように叱られた。
あたしは素直にしょんぼりうなだれる。
全く彼女の言う通りだったし、自分でも無謀だったと思ったから。それになんだかナミがすごく怖かったんだもん。
彼女は少ししゃがんであたしの顔を覗き込む。
「立てる?とにかく子供たちを追いかけるわよ!」
そうだ。モチャは。
ナミの言葉にハッとして、あたしは俯いていた顔を上げる。
ビスケットルームの出口を振り返ると、ちょうど、モチャ目掛けて子供たちが走っていくところだった。
ロビンやウソップでも凶暴な子供たちを止めるのに苦労しているらしい。彼らの手をすり抜けた子供たちがモチャの持っているキャンディ目掛けて突進している。
「モチャ…!」
モチャが怯えてダッと駆け出すのが見えた。
早く彼女を追いかけないと…!