第15章 存在理由
「アウラ!!」
響いた声に振り向くと、ナミがチョッパーを抱えて走ってくるところだった。ウソップとロビンが子供たちの暴走を止めていて、その後ろにはゾロやブルック、侍さんが見えた。
あたしはちょっと安堵の息を吐く。
よかった。これで後ろは気にしなくていい。
みんなが来たからきっと子供達はもう大丈夫。
「…ってことは」
弱気なことは言ってられない。みんなが子供たちを助ける間くらいは、あたしがこの人を足止めをしなきゃ。
策なんか無かったけど、同じロギアなら攻撃が効かないのは彼女も一緒のはず。
彼女と戦う方法を考えながら、もう一度向き合おうとした時、
「馬鹿野郎!前みろ!」
「よそ見するなんて余裕ね」
ウソップの声と、それよりずっと近くからモネの囁き声が聞こえて。
ハッと振り返ると何かが視界をよぎった。
──モネの鉤爪だ。
咄嗟に飛び退こうとしたけど、先に脚を掴まれ鋭い爪が肉に食い込む。
攻撃が当たらないはず…って、それはモネがハキを使えない前提の話だった!!
あたしは盛大に転倒して、己の甘さを呪った。そして、倒れ込んだまま、モネが巨大な錐のようなものを振りかぶるのを見て、真っ青になる。
流石にこれで貫かれたら死んじゃう…!!
「ゾロ!アウラを助けて!!」
痛みを覚悟したその時、耳に届いたのは悲鳴にも似たナミの声。
「どっちだ」
「白くて小さい方!って今の状況見りゃ分かるでしょうが!」
彼女の絶叫が聞こえた。と、思えば、それとほとんど同じタイミングで、倒れ込んでいるあたしの上に黒い影が落ちる。
そして。モネが振り下ろした錐があたしを貫く前に。
──ガキィン!!
黒い影が割り込んでそれを受け止めたの。
爆風があたしの髪を吹き飛ばす。
あたしが起こしたものじゃない。
思わず目を細めて見上げると、影はそのままモネを弾き飛ばして、気怠げにブンと腕を振った。持っているのは…刀??
「え、え!?」
「どいてろ。ジャマだ」
三刀流の剣士─ゾロのおかげで、どうやらあたしは串刺しを免れたようだった。