第15章 存在理由
彼女の次の出方が分からなくて、あたしは一度飛び退って距離を空ける。そしてギリギリと歯を噛みしめた。
これじゃ、あたしがハキってやつを使えないことには勝てっこないじゃない。
ああ、なるほど。
だからモネはさっき、ローがいなくて勝てるの?って言ったんだ。やっと分かった。
「やっぱり…能力者になったからって、いきなり強くなれるわけじゃないのね」
あたしは唇を噛んで、佇むしかなかった。
──どんなに素晴らしい能力を持った者でも、その能力を使いこなせなきゃ意味がない。
あたしは彼女と戦いながら、ひしひしとそれを感じ取っていた。
例えば、同じ悪魔の実を食べて、同じ能力を得た人間がいたとして。
だけど、その2人の実力はきっと同じじゃない。
使い手の素質や磨き方で必ず優劣がつく。
能力は、使い手次第で強くも弱くもなるのよ。
だって、まさにそうだったじゃない。
あたしは、ローの行動を思い出す。そして、その化け物じみた才能を今更ながらつくづくと実感するのだった。
彼はあたしの体を使ってヴェルゴの手から逃れ、何でもないように檻の中まで戻ってきた。
初めて使う体で、初めて見る能力で、当たり前のように使いこなして、その上、人に怒ってる余裕があるなんて。
自分の能力でさえ、今試行錯誤して操っている身からしてみればちょっと信じられない。…あの人の戦闘センスって一体どうなってんのよ。
「これだから天才肌の人間ってやつは…」
思わずぼやく。
相手が自分より実力が上だと分かっている以上、とれる選択肢は二つ。隙を見て逃げ出すか、誰かが来るまで時間を稼ぐ、か。
子供たちを残して逃げるなんてできないから前者は無し。後者は…。
もう一度、何か攻撃を試してみようと思った時だった。不意にあたしの注意がモネから逸れた。
──背後が俄に騒がしくなってきていることに気づいたの。