第15章 存在理由
「そう言えば…」
さらに苛立ちを募らせるあたしが何か口を開く前に。
ふと思い出したように言葉を発したのは目の前のハーピーの方だった。
「ねぇ、あなたはローの何なの?私の知る限りでは、あなたたちに接点は無いはずなんだけど」
ちょっと首を傾げて、あたしに問いかける。突然思いがけないことを聞かれて、反射で口を開いてしまう。
「何って。そんなの、ローは、あたしの」
そして、そのまま止まってしまった。
「あたしの…」
彼は、あたしの…?
あれ。彼とあたしを上手く表現する言葉が思い当たらない。
さっきローにあれだけ怒っといてなんだけど、確かに、あたしたちの関係って一体何なんだろう。
ただの知り合い、と言われたら傷つくくせに、それ以上の何かだとも言えない気がした。
ローは、あたしの大切な人で、失いたくない人で、それで…?
口を開いたまま固まってしまったあたしを見て、モネは面白そうに目を細めて笑う。
「…もしかして、だけど。彼のこと、好いてたりする?」
「え、な!?!?ちがっ…急に何を」
「あら、図星?」
ますます笑みを深くするモネ。取り繕うにも無理があるくらいあからさまに狼狽えてしまって、あたしは赤くなって口をパクパクさせるしかなかった。
さっきの苛立ちは一瞬でどこかに吹き飛んだ。
ただ、恥ずかしい。
恥ずかしすぎる…!
女の勘だかなんだか知らないけど、あたしってそんなに分かりやすいの???初対面で言い当てられるなんて…!
モネはクスクスと笑い、さらにあたしが動揺するような言葉を続けた。わざとらしく哀しそうな視線を向けながら。
「でも残念ね。あなた、ローの好きなタイプって知ってる?彼、ああ見えて歳上が好きなのよ。あなたじゃ、ちょっと無理ね」
「え!?うそ!?」
まさかまさかとは思ったけど。
さっきのデートの話って、本当だったわけ…!?
ローはモネみたいな人が好みってこと!?