第15章 存在理由
「ローのお守りがないのに、逃げ出さないところは褒めてあげるわ」
…くそう。
思いっきりなめられてる。
綺麗な顔に意地悪な笑みを浮かべて、余裕たっぷりに舌なめずりする彼女──モネ。その様子がなんとも憎らしい。
あたしだって敵意丸出しで思いっきり睨みつけてるんだけど、彼女にはちっとも痛くないらしい。
相手にされていない。
そのことにますます苛立ちが募った。
「あの人の自信、ちょっと分けて欲しい気分よ…」
話題に出たからか、ふと頭に思い浮かんでしまって、思わず独り言ちる。
時折、人を馬鹿にしたような笑みを浮かべる彼。
いつも余裕綽々で、どこからその自信が?と言いたくなるような強気な態度で。
あたしにもローくらいの実力があったら、もうちょっと心に余裕ができたのかな。
一瞬そんな風に思ったけど、
「そんなに睨まないでよ。怖いわ」
わざとらしく肩を震わせるモネを見て、すぐに思い直す。
…いや。
どっちにしろ、あたしは苛立ってたに違いない。
だってあたし、この人の挑発を聞き流せるほどの広い心は、持ち合わせていないんだもん。
なんていうか、言葉もそうだけど、隠そうとしない馬鹿にした態度がさらにむかつく。
──あなたなんて相手じゃないの。怖くないのよ。
そう言われているみたい。
現に、彼女はあたしと対面しながら、ずっと後ろのモチャを気にしている。キャンディーを持って逃げないように見てるんだ。それが分かるだけに、余計に腹が立つの。
…ほんと、馬鹿にしてくれちゃって。