第14章 ゆりかご
ヴェルゴのことを考えると同時に、さっきの彼の行動が急に違和感となって思い起こされた。
──あの時、シーザーはあたしを殺そうとしたけど、ヴェルゴはそれに反対した。彼は絶対に、あたしをシノクニが充満する研究所の外に出そうとしなかったのだ。
あの時は必死だったからあんまりその意味を深く考えなかったけど、今思えばどう考えてもあの反応は不自然だった。
…ヴェルゴもローもあたしに関する何かを知っている。
そして、それはきっと、彼らが"ジョーカー"と呼んだ人物に関係しているんだ。そんな気がした。
あたしを死なせたくない理由。
ジョーカーという人物。
封じられていた能力。
それらがどう結びつくのか、あたしには見当もつかない。ローに聞いたら教えてくれるんだろうか。
また無視されたり濁されたりする?
だけど、これはあたしにも聞く権利があるはずだ。
いや、あたしは知らないといけない。
もっと、自分のことを。
だって、最近わかったことなんだけど、あたしはあたし自身のことを、アウラという人間のことを、驚くほどに知らないのよ。
この名前は、あの人がくれた。
それは分かったけど。
じゃあ、アウラになる前は、あたしは一体なんだったの。断片的に思い出されたあの記憶は一体なに。
それがきっと、あたしの知らないといけないことなんだと思うの。
そして多分、ヴェルゴはそれを知っている。
だって彼は、あたしのことを何か別の呼び方をしていなかった?アウラとは別の呼び方を。
あの時、彼は何て言ってたっけ──。