第14章 ゆりかご
きっとこの能力を使えば、シーザーのこともすぐに見つけられるんだろう。
奴の非情な手口を考えると、すぐにでも飛んでいってとっちめてやりたいところ。だけど、同時に複数を追うことはできそうになかったから、今優先すべきなのは子供たちの方だ。早く見つけ出してここから脱出しないと。
そう思ってたんだけど…。
あたしの耳と鼻は知らず知らずのうちに、別の気配を察知してしまった。
どうしても無視できない、この気配。
ハッと背後を振り返る。
「…ヴェルゴ!?」
なんで彼が後ろに!?
シーザーと一緒にいるのではなかったの!?
それに、この気配の強さから考えると、彼との距離はそんなに遠くない。そして、そのすぐ近くによく知った人いるのも分かった。
海軍G-5のみんなと、その中に紅一点。たしぎさんだ。
どうしよう。
このままでは彼女が危ないんじゃ…!?
一瞬、彼女の元まで飛んで行こうかと思った。
だけど、さっきのローの言葉──ヴェルゴとモネとは戦うな、という彼の忠告が脳裏を掠めて、あたしの中に少しのためらいが生まれる。
ど、どうしよう。
どうしたらいい…!?
前と後ろを見比べて1人焦っていると、
「海兵のかわい子ちゃんの声…!!」
誰かが茶ひげの背中から飛び降りるのが見えた。
「あら、サンジくん…?血相変えてどうしたのかしら」
隣でナミが不思議そうに首をひねる。
彼はどうやら、彼のいき過ぎたフェミニストの精神に従い、たしぎさんを助けに行ったらしい。なんとなくそんな気がした。
あたしはちょっと迷ったけど、さっき易々とヴェルゴに捕まったことを思い出して、結局、前を向くことにした。
ここは彼に任せた方が良さそうだと思ったから。
あたしが行ってもヴェルゴに勝てると思えない。
それなら、今あたしが少しでも役に立てるところにいるべきだ。