第14章 ゆりかご
ジリジリとサンジから距離をとっていると、上の階からよく知った声が聞こえた。
「ここにいる全員に話しておくが、八方毒ガスに囲まれたこの研究所から外気に触れず直接海へ脱出できる通路が一本だけある。"R棟66"と書かれた巨大な扉がそうだ」
そうだった。
こんなことをしてる場合じゃない。
ローの言葉にあたしは気持ちを引き締める。
この研究所の周りにはシノクニが立ち込めているんだから、早く子供たちを探して、ここから脱出しないといけない。
「おれに殺戮の趣味はねェが、猶予は2時間。それ以上この研究所内にいる奴に命の保証はできねェ」
言い終えると、ローは最後にあたしの方を見た。その目が、喋ってねェで早く出ろと、そう言っているような気がした。
あたしはその目を見つめ返して、小さくこくりと頷く。さすがに笑ってる場合じゃなさそうだ。
「ナミ、急ごう!子供たちが心配だよ」
「そうね。早く探して通路に誘導しましょう!」
あたしたちはそれぞれの目的を達成するために一斉に動き出したのだった。R棟66の扉を目指して。