第14章 ゆりかご
「天使ちゅわぁあああ〜〜ん!!はじめまして〜〜〜!!!!」
なにやらデカイ声と共に、あたしの視界を黒くて長い物体が横切った。
「ひぃっ」
「やめなさいサンジ君!怖がってるでしょう!!」
思わずのけぞってしまったけど、よくよく見たら階下から意味不明な言葉を叫んでいた人──サンジだった。
ついさっきまでナミが彼の体の中に入っていたから、見るのは初めてじゃないんだけど、中身が変わった瞬間まるで別人のようだった。…いや、実際別人なのか。
「は、はじめまして。さ、サンジ…?」
「おれをご存知!?なッッんて幸せなんだァ〜〜!!!お嬢さん、お名前を頂戴しても??」
体をくねらせ手を握らんばかりに迫ってくる人に少々怖気付く。てっきり見た目からはクールな印象を持ってたんだけど、サンジって人は普段はこんな感じなの?
「あの、えと…アウラ」
「アウラちゃん!!!可憐な響き!!麗しい声!!まさにスウィ〜〜〜トエンジェル!!!」
「…は、はぁ」
冷たくあしらわれるのも、怒鳴られるのも慣れっこだったけど、初対面でここまであからさまに好意を持って接されると逆に不気味だ。
初めて会う人種にどう反応していいか戸惑っていると、ナミがひらひらと手を振って軽く言う。
「無視していいわよ。こういうヤツだから」
サンジには盛り上がってるところ悪いけど、あたしはナミの言葉に頷く。
ちょっとあたしではこのハートいっぱいのセリフを受け止めきれないと思ったから。