第14章 ゆりかご
それにしても。
どうしてあの人はあたしを見てるの!?
血走った目でこっち見ないで…!
警戒心を露わにしてサンジの動向を探っていると、
「お前はどうする?」
突然、ローの言葉が落ちてきた。
反射で彼の顔を見上げる。思ったより近い。
ルフィと今後の動きについて喋っていたようだから、多分そのついでにあたしにも聞いておく気になったんだろう。
そう思いながら、さり気なくちょっとだけ彼から距離をとる。あんまり近いとまたいろんな感情を思い出してしまいそうだったから。
「どうするって…」
「おれと一緒に来るか?」
「えっあたしが選んでいいの?」
さっきまであたしが何をするにしても怒っていたのに。どうやら、彼はあたしの聞き分けの無さに降参したらしい。
一瞬そう思ったんだけど。
「ここはあと2時間足らずで毒ガスが充満する。どちらにしろ脱出するだけだ」
…なるほど。
想定と大幅に違う状況になってしまっているから、つべこべ言ってる場合じゃなくなったってわけか。誰について行こうが構わないけど、とにかく外に出ろってことね。
あたしはそれを聞いて、ふともう一度階下に目線をやる。
さっき見当たらなかったのは気のせいかと思ったんだけど、やっぱり。
海兵やら兵士やら麦わら一味やらで乱闘騒ぎになっているけど、そのどこにも彼女たちがいない。
──モチャが。
この研究所から逃げ出したはずの子供たちの姿が。
「子供たちが見当たらないの。きっとシーザーに連れて行かれたんだ…。あたし、子供たちを探してからここを出るよ」
そう言って、ローから離れて通路の柵に手をかける。ローは一瞬眉を顰めたけど、それにも文句は言わなかった。
「死にたくなきゃ早めに脱出しろよ。…それと、ヴェルゴとモネには気をつけろ。出くわしちまったら戦わずに能力を使って逃げるんだ。じゃねェと…」
「わかった!言うこと聞くから!!さっきみたいなことはもう二度としないで…」
ローの鋭くなった目線で彼が何を言おうとしたのか察して慌てて止める。
もうあんな体験は懲り懲りだ。
本当に心臓に悪いんだから。