第14章 ゆりかご
さっきまでの異常事態が落ち着いて少し考える余裕が出てきたら、やっぱり気になるのはこの能力のことだ。自分の身に起きたことなんだから、気にならない方がおかしいのかもしれないけど。
どうして、あたしはこんな能力を持っていたんだろう?悪魔の実を食べたのよね?きっと。
だけどそれはいつ?
物心ついてから、そんなもの食べた覚えはない。
それに、夢の中のあの人はどうして海楼石をあたしに渡したの?どうして能力を封じたんだろう?
「ねぇ、ロー。あたしが能力者だって知ってたの?」
今聞くことじゃないのかもしれないけど、一度気になったら次々と疑問が湧いてきて、思わず隣を歩く彼に聞いてしまう。
今一番あたしのことを知ってるのは、あたし自身じゃなくて多分この人だ。そう思ったから。
ローはこちらを見ない。
だけど、質問には答えてくれた。
「海楼石を付けている時点で何らかの能力者だろうと想定はしていた。能力自体はさっき知ったが」
「それって…はじめっから知ってたってことじゃないの!じゃあ教えてくれても良かったのに!」
思わず責めるような口調になってしまう。
そう言えば、初めてあの森で出会った時、彼、ひも飾りのこと気にしてたじゃない。触れて驚いていたのはそういうことだったのね。
あたしに話してないだけで、彼が知り得ている情報は他にもあるのかもしれない。
そう思うと、さっきあれだけ怒られたのが何だか理不尽な気もしてくる。
あたしもローの言うこと聞かないで自分勝手に行動してしまったけど、だけどそれはあたしばっかりが悪いんじゃないと思う。だって、ローは大事なことを何も教えてくれてないんだもの。
そう言い募ろうかと思ったんだけど、でも。
「…お前が島から出なければ知らなくて良かったんだ」
ぽつりと、さっき白い部屋で言ったのと同じ台詞を言うローの横顔が、なぜだか少し後悔しているように見えて、あたしはそれ以上何も言うことができなかった。