第14章 ゆりかご
怒りとパニックでワナワナと拳を震わせてローを見ていると、久しぶりにたしぎさんが口を開いた。
「おい、ロー。お前ヴェルゴを倒したのか」
「いや…今は一旦引いただけだ。自分のじゃねェ体でヴェルゴと闘り合うのはさすがに面倒だからな」
その会話を聞いて、あたしは初めてスモーカー中将とたしぎさんの身に起きたことを知る。
そうか、そういうことだったんだ。
ずっと感じてた違和感はこれだったんだ。
ローは確かにあの時たしぎさんを斬らなかった。斬らなかったけど、しっかり彼らの不利になるような策は仕掛けてたんだ。…彼らの中身を入れ替えることで。
たしぎさんは大股を開いて座り、不機嫌そうに眉を顰めている。どうもさっきから彼女らしくないと思ったら…。
自分が同じ状況になって、やっとあたしはその違和感の正体に気付いたのだった。
「そうか、ならいい。…アイツを倒すのはおれの仕事だ。海軍の尻拭いを海賊にされちゃ立つ瀬がねェ」
「勝手に言ってろ。おれはおれで自由にやる。こっちにもアイツをここで消さないといけねェ理由ができた」
そう言ってなぜかあたしを睨むロー。
何であなたがそんなに不機嫌そうなの。
眉間に皺寄せてこっち見ないでよ。
今の状況で怒っていいのはあたしのはずで、間違ってもあなたが不機嫌になる理由はないでしょう。
そう思って、あたしも負けじと睨み返す。
それに、これはどうでもいいけど。
あたしって、そんな人相悪かったっけ?もうちょっと人当たり良い雰囲気だと思ってたんだけど。
中身が変わるとやっぱ顔つきも変わるの、かな。これからずっとそんな無愛想な態度されたんじゃたまったもんじゃないんだけど。
…ああでも、戻れないんなら別に関係ないか。