第14章 ゆりかご
「じゃあ、もし、できなかったら?」
「…このままだ」
肘をついて手のひらに顔を乗せ、何でもないことのように言う彼。その言葉で、あたしの心臓は一気に冷えた。
「う、嘘だ。そんなの嘘だ!!!!」
「……」
「…え、まさか本気なの…?」
「…あァ」
顔から完全に血の気が引いていくのが自分でも分かった。
そんなの、信じられない。
というか信じたくない!!!
「じゃ、じゃあ!!自分の心臓くるくる回してる場合じゃないでしょ!!!どういう神経してんの!?どうすんの、これ!?」
ローは別に自分の体に頓着ないのかも知んないけど、あたし、一応女なんだよ!?
それを、仮にもこ、好意を持ってる人に明け渡してるなんて、考えただけで卒倒しそうになるのに、その上戻れないって!?
「おれの体でギャーギャー喚くな。見てて不快だ」
「は…!?」
ほんっっっと信じらんない。
なんて自分勝手なのこの人は。
女心ってもんをまるで分かってない…!!
分かってなさすぎる!!
あたしはもう恥ずかしいやら腹立たしいやらでパニック状態だった。
何とか冷静になろうと必死なのに、あたしを混乱させている張本人は全く気にした様子もない。それどころか、自分の心臓を手の上で転がしながら、ゴチャゴチャ言ってねェで早くしろって顔でこっち見てるんだけど。
もう誰でもいい。
誰でもいいから、目の前の男に常識ってもんを分からせてやって欲しい。ついでに一回ぶん殴らせて。