第13章 悪魔の実
シーザーの誰かへ向けた大演説の後、あたしは目を細めてモニターの中の物体を見つめていた。
兵器…??
あのブヨブヨしたものが?
確かに、研究所に入る前に、海兵とケンタウロスが毒ガスだなんだと叫んでいた気はするけど。
あたしが怪しんでいると、画面は一瞬白くなって、幾らもたたない内に巨大なキャンディを映し出した。別の場面かと思ったけど、そのキャンディの後ろにはさっきのスマイリーとやらが見えるから、同じ場所を別の角度から映したんだろう。
キャンディを運んできたのはどうやらこの研究所の兵士のようだった。防護服に身を包み、キャンディの影からスマイリーを見守っている。
「スマイリー!お前にとっておきの"エサ"をやろう!」
シーザーの芝居がかった声がした。スマイリーはズルズルと地面を這って、引き寄せられるようにキャンディに近づいてゆく。
そして、それのすぐ近くまでたどり着き…バクッと一口に飲み込んだのだった。
──変化はすぐに現れた。
地面を這うスマイリーの赤紫色の体の表面が、ぶくぶくと泡立ち始める。彼に感情があるのか定かではなかったけど、傍目には苦しんでいるように見えた。
「なに…?」
ごくり、息を呑んでそれを見つめていると、
──ボフン!
突然、破裂音が聞こえて、スマイリーがモクモクと紫色の煙に包まれる。
それがゆっくり辺りに広がった時、スマイリーの姿はもうどこにも見当たらなかった。小山のようだった赤紫色の物体は、跡形もなく消え失せてしまっていたの。
そして、程なくしてあたしは、シーザーがそれを"毒ガス兵器"と呼んだ意味を知るのだった。