第13章 悪魔の実
「ゆきんこォ!!おいお前!」
「余計な気を起こすなよ。力加減を間違うといけない。おれは殺したくないんだ」
そしてその瞬間、あたしがローの心臓を奪い返せたのは、ヴェルゴがそうさせたからだと気づいた。あの時、この男は全く本気を出していなかったんだ、と。
あたしの体は今風のように軽くて、たぶん他の物理攻撃なら貫通したはずなのに、なぜかヴェルゴの手だけは通り抜けることができなかった。
「な、なんで…」
「お前はハキも知らないのか。全く、それほどこちらと無縁の場所に隠されていては、そりゃあ誰にも見つけられないな」
ハキって。
さっきローが言ってたアレのことよね。
ハキが使えないと話にならないってつまり、こういうことだったんだ。自然系(ロギア)でも物理攻撃でダメージを与えることができるってこと。
こんな時にそれを知ってもちっとも嬉しくない。どうせならもうちょっと早く知りたかった。
…知ってたとしても、ヴェルゴのこの手を避けれたかは甚だ疑問だけど。
ヴェルゴはあたしをズルズルと引きずって元いた位置まで戻っていった。そして、おもむろに地面に伸びているシーザーを蹴る。
「痛ェ…!!」
「起きたか。おれの用は済んだ。早く計画を始めようじゃないか」
「あ?あァ。…頭が痛いのはなぜだ。それに今、お前おれのこと蹴ったんじゃないだろうなァ…!?」
「いや、蹴っていない」
平然と嘘を吐くヴェルゴに、さらにシーザーが何か言いかけようとすると、
「マスター、映像の準備ができました」
モネが分かりやすくそれを遮る。そして、言った瞬間、パッと部屋の中の巨大なモニターに明かりがついた。