第13章 悪魔の実
「ほらやっぱり!アイツ強いじゃねェか!」
「…能力者だったのか」
ルフィとたしぎさんの声が聞こえて、あたしはハッと後ろを振り向いた。
檻の中、ルフィは楽しそうに笑っていたけど、ローは油断ならない様子でヴェルゴを睨んでいて。
「ヴェルゴ…どういうつもりだ」
「ヴェルゴ"さん"だと、言っただろう。だがしかし、今おれはとても機嫌がいいからお前のそのクソ生意気な態度もそこまで気にならないな」
そう言ってあたしを見る。サングラスをしているせいでどんな表情をしているのかは判別が付かなかったけど、何となく、目を細めているんじゃ無いかという気がした。
彼はおもむろにあたしに向かって手を伸ばそうとするもんだから、
「……!」
あたしは慌てて、また檻の前まで移動した。
ローの心臓を手に入れた瞬間、緊張が解けたのか、自分でも少し混乱しているのが分かった。
同時に、何故だか急に目の前の男がとても不気味に思えた。
だって、心臓を取られてもあんまり気にしたようでは無さそうだし、実際本人は、むしろ機嫌が良いとまで言っている。
せっかく敵のこれ以上ない弱点を手に入れていたのに、それを奪われて機嫌が良いと言う理由は全くもって分からない。
困惑していると、ヴェルゴがまた口を開く。
「今までどこに隠してたんだ、ロー。まさか生きているとは思わなかった。彼へのいい手土産になるじゃないか」
「…お前は、いや、"ジョーカー"はどこまで知っているんだ」
「どこまで、だと?お前は何も分かっていないな。…知らないのはお前の方だ、ロー」
あたしを通り越して続けられるヴェルゴとローの会話。あたしはびっくりするくらい完全に無視されているようだった。目の前に立っているのはあたしのはずなのに。
「…失礼な人ね」
思わずひとりごちると共に、ローが言ったジョーカーって誰だろうと少し気になる。ローに聞こうと振り向いた瞬間。
急に、ゾワっと身の毛がよだつ感覚があった。
多分それは直感。
これから良くないことが起きると、あたしの本能が警鐘を鳴らす。
「…だから逃げろと言ったんだ」
ローの呟きが聞こえて。
次の瞬間には、
「…うッ…!」
ヴェルゴがあたしの首を鷲掴み、ぎりぎりと締め上げていたのだった。