第13章 悪魔の実
あたしがしゃがみ込んで触れた先。
そこには、あの人がくれたお守りがあって。
さっきシーザーが倒れた理由も、数年前、攫われた海賊船で、能力者の敵に蹴りが入った理由も。
そして、あたしが海で泳げない理由も。
全部、一つの可能性を示していて。
『今日気づいたんだけど、トラ、足になんか付けてるよな』
いつかのナーティの声が、頭の中に響く。
ずっと前からその可能性には気付いていたのに、ずっと怖くて外せなかった。
外したら嫌なことが起きるんじゃないかって。
もう元には戻れなくなっちゃうんじゃないかって。そう思って。
だけど、ローを失うことより怖いことなんて、あたしにある?
自問して薄く笑う。
──無い、でしょ。
あたしはひも飾りにかけた指にゆっくり力を込める。
脳裏に、またあの人の『外すな』という言葉が閃いた気がした。
だけど同時に、
『死ぬくらいだったらそれ、外しなよ』
いつかの懐かしい彼の声が聞こえたの。
金色の髪を風になびかせて、別れ際にそう囁いた彼の声が。
──マリー、あなたが言ってたのはこのことだったのね。
「銀髪…女…海楼石。…能力者、か。──お前まさか、"マリージョアの風"か…?」
ヴェルゴが低く呟く。
ローが後ろで小さく息を呑んだのが分かった。
「こいつを知っているのか…?アウラ、外すんじゃねェ!!」
だけど、その時にはもうあたしはひも飾りを力いっぱい引っ張ってしまっていて。
物心ついた頃からずっと付けていて、一度も千切れたことがなかったそれを。
──ぷつん。
引きちぎってしまったの。