第13章 悪魔の実
あたしは真正面の男から目を離さないようにしながら、ゆっくり地面にしゃがみ込んで足首に指をかけた。
ローはそれだけであたしが何をしようとしてるか分かったみたいだった。
「逃げろ!お前じゃソイツには勝てねェ!」
珍しく焦った様子のローの声。いつも余裕綽々としている彼にしてはほんとに珍しい。
そんな切羽詰まった声、初めて聞いたかも。
だけど、やる前から諦めるなんて、そんなのらしくないよ。
だってあなたが言ったんじゃない。
いつかのあの森で。
『勝てないかどうかはやってみねェと分からねェだろうが』
って。
混乱はしているけど、あたしが今何をしなきゃいけないのかくらいはわかる。
そしてそれは間違っても我が身可愛さにこの場からスタコラと逃げることではない。
だって、あそこにはローの心臓があるんだもの。
確かに、新世界に出てくるにしてはあたしには覚悟も実力も足りなかった。だけど、ローの命が危ないんなら話は別よ。
彼を救うためなら、あたし、自分1人の命を賭けることくらい痛くも痒くもない。
そのことに関しては、覚悟なんていくらでも決めてやる。
──あたしは絶対に、彼を死なせたりなんかしないんだから。