第13章 悪魔の実
「ネズミが湧いていると思っていたが、こんなことになるならおれが紅茶を飲む前に消しておくんだった」
「ヴェルゴ、あなた紅茶なんて飲んでないわよ」
「そうだった…おれは紅茶なんか飲んでいなかった」
「それより、彼、伸びちゃったけどどうしようかしら?起こす?」
「起こさないとティータイムを始められないな」
「これから始めるのはティータイムじゃないわよ」
「…そうだったな」
…な、何言ってんのこの人たち。
呆気にとられて目の前で繰り広げられるモネとヴェルゴと呼ばれた男のすっとぼけた会話を聞いていると、
「気にするな。お前は逃げることだけ考えてろ。…おれが隙を作る」
後ろからローの冷静な声が聞こえてくる。
その声を聞いて頭の中に急に思いついたものがあって、あたしはパッと檻の中を振り返る。
今の会話からすると、ヴェルゴはネズミ…つまり、あたしがいることに気づいてたってことよね。
ルフィもさっき、"やっぱゆきんこだったのか"って言ってたし、天井裏に誰かいるってことは分かってたんだと思う。となると、ローが気づいてない方がおかしい。
あたしが声出しちゃった時に、一瞬こっちを見たように思えたのはやっぱり気のせいじゃなかったんだ…。
そして、確かその後すぐに、彼はシーザーの気を引くような挑発的な発言をした。
それってもしかしてだけど、シーザーに天井裏に注意を向かせないため…?
そんな結論に思い至って、あたしはまじまじとローを見る。考えすぎなのかもしれないけど、何故だかあたしの勘は当たっているような気がした。