第13章 悪魔の実
「契約が役に立ったようだな、シュロロロ…」
典型的なヴィランさながらの様相で、悪い笑みを浮かべるシーザー。そしてもう一度ローの心臓を強く叩く。
「……うァ!!……くッ」
あたし、今こんなところに這いつくばっているんじゃなければ、悲鳴をあげてたと思う。
ロー、あなたって人はなんて大胆なことをするのよ!さっきルフィのことを予想の斜め上をいくと思ったけど、あなたもよっぽどじゃないの…!!
いずれ敵対すると分かっている人に自分の心臓を渡すなんて。思い切りの良さにも限度ってもんがあるでしょう!
あたしが冷や汗をかきながらシーザーがそれ以上ローを苦しめないことを願った。
あたしが知らないところでローに危険が及ぶのは嫌だ。だから、こんなところまで会いにきたのに。
目の前で苦しめられる彼を見るなんて、そんなの耐えられるわけがないでしょう…!!
…そう思ったら、どうやらあたし、力を入れすぎてしまったみたい。ダクトの点検口なんて、そんな力を込めて押さえるもんじゃないのに。
ぐっと前のめりになった瞬間に、ガコン、と嫌な音がした。
心臓がヒュッと縮んで、蓋が抜けてしまったんだと気づいた時にはもう、あたしの腕は空を切って。
そして、そのまま、面白いくらいに引っかかりもなく、ダクトの外にするりと抜け出てしまったの。
この後起こるであろう最悪の事態が瞬時に頭の中を駆け巡ったけど、パニックになったその一瞬の後、あたしはすっかり思考を放棄した。
そして、あぁ、あたしってよく色んなところから落ちている気がする。これも、ドジっ子の宿命なのかしら。
なんて呆然と思いながら、今まさに会話が繰り広げられているその中心に落下してしまったのだった。