第13章 悪魔の実
あたしはぴったり閉じられている通気口のカバーを外すと、何の躊躇いもなく、その中に潜り込んだ。
どうしてそんなことを知っているのか、なぜ今思い浮かんだのか、それを考えている余裕はあたしには無かった。
研究所内部に入れたんだから、とにかく先を急がないといけない。
それに、無理に思い出そうとして、またあの痛みに襲われるのが怖かった。次はきっと我慢できそうにないと思ったから。
そして何より。
あたしはこれ以上、あの声を聞きたく無かったの。
柔和に話しかけているように聞こえたけど、どうしても滲み出る冷たい響き。
観察対象に向けるような、客観的な物言い。
男は、あの子に愛情を持って接していない。
少しの言葉だったのに、痛いくらい伝わってきて。
──それが、あたしの心をどうしようもなく怯えさせたの。