第12章 アウトサイダー
「ローは、助けたいと思わないの?」
思わずぽろりと口から溢れる。彼は、ここに縛られている自由のない子供達を見て、何とも思わないんだろうか。本当に?
小さな声だったけど、彼にはちゃんと聞こえたらしい。あたしに視線を合わせて、怪訝そうに顔をしかめ、質問を返してきた。
「本気で助けてェのか?どこの誰だかも分からねェガキ共だぞ」
どこまでも淡白な彼の言葉。どうやら本心らしいことが口調から分かる。
それを聞いて、あたしの中で微かにわだかまりが生まれた。無意識に言葉が口をついて出る。
「…助けたいよ。放って置けるわけないじゃないの」
どうして、知らないことが子供たちを助けない理由になるの。この子たちがどこの誰かなんて、どうだっていいのに。
苦しんでいる人を前にして、その人を助けることにわざわざ理由なんていらないのに。
あたしは彼を真正面から見つめ返す。
「どこの誰でも、目の前で苦しんでいる子供がいるなら、あたしは見て見ぬ振りはしたくない」
「…綺麗事だな。いっぱしの口を利くが、ガキ共を飼い殺してる奴…シーザーは懸賞金3億ベリーの賞金首だ。楯突こうってんなら無事じゃ済まねェぞ」
剣のある目で見つめられても、あたしの意思は変わらなかった。
「…それでも。あたしがこの先どんな痛みを背負おうと、今、苦しんでて辛いのは子供たちの方だから。やっぱり、見過ごすことはできないよ」
ローを見つめ返してきっぱり言い切る。
…本当は。
ローが昔話してくれた命の恩人は、その人は、あなたがどこの誰だか分からなかったら、見捨てるような人だったの?
そう、言おうと思ったの。
だけど、それをするときっとローの心を深く傷つけてしまうような、そんな気がしたから。
それはぐっと飲み込んで、あたしの言葉に変えた。彼の過去に立ち入る権利はあたしには無いんだもの。
だけど、どうしてだろう。慎重に言葉を選んだはずだったのに、あたしが言い終えた時、ローの目が一瞬揺れたように見えた。
あの頃みたいに、分かりやすく哀しい目では無かったけど、何となく、あたしにはローが動揺したのがわかった気がした。