第12章 アウトサイダー
ややあって、彼は一つ、ため息をこぼした。
「…分かった。時間もねェ。ガキ共に投与された薬のことはこっちで調べておく」
「ほんと…!?」
「あァ。それで文句はねェだろ。だからお前は大人しく…」
ローがそう言いかけた時、同盟を考え直させようともう一回ルフィに迫っていたナミが、急にパッと振り返った。ローの声がちょうど耳に入ったらしい。
「あんた、子供たちを助けるのに協力してくれるって?」
「ゆきんこ〜。シーザーをぶっ飛ばすのはおれだけど、お前も連れてってやろうか」
ナミに首を絞められて苦しそうなルフィがまたあたしに声をかける。
そうだ、あたしさっき返事してなかったもんね。
「おい待て、そいつは…」
ローが顔を引き攣らせて何か言いかけてたけど、そんなの知ったこっちゃない。
あたしはルフィの目を力強く見つめ返す。
「うん、あたしも行く!」
「おう、わかった!」
ローは2回も話を遮られてしばらく唖然としていたようだったけど、やがて頭が痛いとでも言うようにこめかみを押さえて、またため息をついた。
「…お前がどうしたいかは知ったこっちゃねェが、おれの邪魔だけはするなよ」
「りょうかい!」
あたしは満面の笑みでそれに応える。彼はそんなあたしを、苦虫を噛み潰したような表情で見た。
「言っておくが、やるべき事が終わればお前を引き摺ってでもここを出る。その時ガキ共がどうなっていようとだ。異論は許さねェ」
「なんでそんな冷たいこと言うの」
「…おれは優先順位がはっきりしているだけだ」
相変わらず言うことは冷たいし、あたしを見る視線は鋭い。
だけど、なんだかんだ言いながら、子供たちを助けるために薬について調べてくれるし、あたしが自由に動き回るのも許してくれる気になったらしい。それだけでもここは良しとするべきよね。
あたしそう納得して、一つ頷いてからローに約束する。
「わかった。じゃあ、あたしはあたしで、やれることを探してみる」
ローはそんなあたしを見て一つ息を吐いてから、不満が抜けきらない様子で目を逸らして、付け加えた。
「時間をやる。…それまで好きにしろ」