第12章 アウトサイダー
ますます苛立っていたら、突然腰の後ろに何かが回される感覚があった。そしてそのまま、ぐいと引き上げられる。
「ちょ!?え!?」
視界が一瞬広がって、また閉じる。
もはや見慣れた背中が、そこにはあった。
ローは無言で、またしてもひょいとあたしを担いだのだ。例の俵担ぎで。
「…海賊と馴れ合うんじゃねェ」
そして低い声でそう言い捨てる。
ローの言ってる意味が理解できなくて、あたしは一瞬止まってしまう。
今のは馴れ合ってたんじゃなくて、どう考えても喧嘩じゃないの。あたしの一方的な、だけど。
しかも。
「ローも海賊じゃないの」
「おれは別だ」
「別って…」
何よ、それ。
よくまあそんなしれっと言えるもんだわ。言ってることめちゃくちゃだって思わないのかな。
それにあたし、絶対ローに交友関係を指図される筋合いはないと思うの。案外根に持つタイプだから、あなたが言ったことまだ覚えてるんだから。
「…あたしが誰と仲良くしようがあたしの勝手でしょ」
面と向かって文句を言う勇気は無いから、ローの背中を見ながらぶつぶつ文句を言ってみる。
「ローとは仲間でも何でもない、ただの"知り合い"なんだし」
「あァ?」
小さい声で言ったのに、担いでる側にはよく聞こえたらしい。怒気を孕んだ声が聞こえてきたから、思わず黙る。
なんでそんな不機嫌そうな声を出せるのか心底分かんないけどね!あなたがさっき自分で言ったんじゃないの!
とは思うものの、これ以上機嫌を損ねるのは本意ではないので何も言わないことにした。
そして、言ってしまってから自分でもちょっと反省。
ああもう、こういうところが可愛くないんだろうな、あたし。絶対もっと上手い返しがあったはずだ。
こういう時にもうちょっと素直になれたらいいと思うのに。
背中で一人しょんぼり落ち込んでるあたしに構わず、ローはさっき地面にぶっ刺さしたと思われる大太刀を、鞘ごと引き抜いた。
ああ、あたしが転がるのを阻止してたのはこの刀だったんだ、なんて変なところで納得していると。
「移動するならこっちの方が早ェ」
彼はルフィを無造作に掴んで、
「シャンブルズ」
「うわっ」
一気に坂の上まで移動したのだった。