第12章 アウトサイダー
そろり、と周りを見てみると、怒ってるその人──ローの向こう側に、とてつもなくでかい人?のような獣?のような何かが寝っ転がっていた。
あたしはこいつに踏んづけられそうになってて、何をしたのかは分かんないけど、多分ローが倒したらしい。
なんなんだこの雪山は。
ケンタウロスはいるし、大男はいるし。
だけどあたしはそんなこと──そんな些細なことに、疑問を感じてる場合じゃないみたいだった。
「言葉じゃあ分からねェって言うなら、その首に輪っかでも付けてみるか?」
ローはそんな大男を背にして、ミノムシのように転がっているあたしを見下ろしていた。背中から黒いオーラを放ちながら。
あたしはごくりと息を呑む。
…マジだ。
とんでもないことを言ってる人の目が一切ふざけてない。
奴は本気であたしに首輪をつける気だ。
あたしを見るローの金色の目が、ギラリと光って見えるのが余計に怖い。傍目から見たらきっと完全に捕食者と被食者の構図だと思う。
「や、やだ。遠慮します…」
あたしは動かない体を叱咤して、必死にブンブンと首を振った。
そ、そんなの絶対嫌だ。
それこそ人権なんてあったもんじゃない。
もちろんあたしだって言いたいことはたくさんあるけど、今の状況で文句を言うのは得策ではないってことくらい分かる。
とにかく、目の前の人をできるだけ刺激しないようにしながら、体勢を立て直さないと。