第12章 アウトサイダー
解放されたと言っても、すぐに頭が正常に働くわけじゃなくて。
細胞という細胞が伸びたり縮んだりするような変な感覚が体を支配する。
体はもちろん動かないけど、視界もなんだか変だった。まるで、ぐわんぐわんと世界全部が揺れてるよう。
歪んでぼやけて、何がなんだか判別がつかない。
朦朧とする意識で、声が聞こえた方になんとか焦点を合わせようと頑張ってみると、誰かの黒い靴が見えた。
あ、足で、足で止められたの?あたし。
そんな雑な…と思いながら、ゆっくり視線を上にあげる。
ぼやぼやする視界でなんとかその人を捕らえようとしたけど、巻きついているマントが邪魔をしてよく見えない。
起き上がるためにお腹に力を入れようとするも、余計気持ち悪くなってすぐにやめる。
諦めて宙を見上げたその時、あたしの目の前に突然黒い影が覆い被さった。
「…え?」
足だ。
黒い靴、の方じゃ無くて。
モノっすごいでかい足の裏。
あたしなんてすっぽり入っちゃうんじゃないかってくらいの。
このままじゃ踏み潰されちゃうんじゃないかってくらいの。
────足。
「ぎゃああああ!!!!」
あたしは我を忘れて可愛げもへったくれもない悲鳴をあげた。
だってこんなのなりふり構ってられないでしょう!!
ぼんやりしてる場合じゃない!!
このままでは間違いなく、ふ、踏み潰される!!
内臓ミンチ、崖から転落、を免れたと思ったら、次は巨大な足でぺしゃんこ!?そんなのってない!