第12章 アウトサイダー
「おいアウラ!とまれ!!」
「そっちは崖だぞ!」
後ろからウソップとチョッパーの声が聞こえる。
だけど、止まれったって、そんなの無理!
この状況でどうしろって言うの!!
あたしは雪山からごろごろと転がりながら必死に止まろうともがいたけど、そんなの全く意味がないみたいだった。なんなら、加速している気もする。
あんたたちの船長、ほんとどうにかして!!
言ってることとやってることがめちゃくちゃよ!
そもそもぐるぐる巻にしたのアイツのくせに、それを忘れてこんなところに置くなんて、ほんと頭おかしいん…じゃ、ない…あぁ。もう頭がまわんない。
ぐるぐる回る視界に、みるみるうちに三半規管が機能しなくなってゆく。目が回る、なんて生やさしいもんじゃない。
「うわわわわわ、あ、もう、駄目…」
きもちわるい、吐きそうだ…。
脳みそがめちゃくちゃにかき混ぜられてるような不快感。お腹の奥から吐き気が迫り上がる。
崖から落ちるのが早いか、それともあたしの内臓がミンチになるのが早いか…。どっちにしろ未来はないんだけど。
転がり落ちるスピードは加速度的に上がり、あたしの視界もますます白く濁っていく。
くそう。あの麦わらのモンキーめ!!
ぜっっったいに許さない。
末代まで祟ってやるんだからーーー!!!
なんて、最期の恨みつらみを込めてルフィを呪っていた、その時。
「何勝手に死にかけてやがる」
なんか聞いたことある声だな、と思った次の瞬間には、あたしはドン、と何かにぶち当たって。
「…うぇ」
勢いつけてまわっていた分、止まった時の衝撃も大きかった。体の中身だけ全部飛んでいったかと思うくらいの反動が体を襲う。
だけど。
だけどようやく、あたしはその長いゴロゴロ地獄から解放されたのだった。