第11章 疑惑の研究所
とんでもないことだ。
知らず知らずの内に、なんて場所に来てしまったんだ。
流石にそう思わずにはいられない。
だってナミの話によると、ここはもともと、世界政府の科学者ベガパンクって人の研究施設で、恐ろしい実験が行われていた場所だったんだから。
ここで開発されていたのは、“兵器"と"薬物"。
囚人たちを使って人体実験なんてものまでしていたらしい。
だけど、4年前の実験失敗によって、この島には毒ガスが蔓延してしまったそうだ。
慌てた世界政府は、そんな島に囚人たちを残したまま封鎖したというんだから酷い話。
なるほど、それで毒ガスなんてワードが飛び交っていたのね。そりゃあ、たしぎさんも"機密事項"って言うわけよ。そんなの、大っぴらげに言えるはずもない。
あたしは島に侵入する際の会話を思い出して一人納得する。
そんな島に取り残された囚人たちは、毒ガスから逃げるように研究所に立てこもった。
だけど、毒ガスはじわじわと彼らの体を蝕んでゆき…。やがて、彼らのほとんどは身体不随になってしまったという。
なんて可哀想な話なんだろう。
いくら囚人とは言えど、人体実験なんて非道な真似をしておいて置き去りにするなんて、人間のすることと思えない。
そして、囚人たちがただ死を待つのみ…となったその時。
"M(マスター)"と呼ばれる謎の人物がこの島に現れたそうだ。
彼は謎の力で毒ガスを取り払い、囚人たちを救ってくれたという。まさに、囚人たちにとって救世主ってわけだ。
「"マスター"いいやつじゃないの!」
あたし、感動してちょっとうるっときてしまったよ。さすがに囚人たちが可哀想だと思ってたから、救いのある話で良かった。
袖で目頭を抑えるあたしに、ナミは険しい顔で腕を組む。