第11章 疑惑の研究所
数分後──。
「ご、ごめんなさい…」
あたしは麦わらの一味に深々と頭を下げていた。
ウソップを突き飛ばしてしまったことと、みんなを疑ってしまったことについて、だ。
結論から言うと、ぜーんぶあたしの早とちりだったの。
彼らは子供達を攻撃したわけじゃなかった。子供たちが暴れるから、ウソップの技で眠らせていただけだったの。
それが分かって、あたしはやっと怒りを沈めて、そして安堵した。
ああよかった。
ビビの友達はやっぱり悪い人たちじゃなかった。
子供達に手をあげるようなそんな外道じゃなかった。
それに引き換え。
「皆さんの体のことも、本当にごめんなさい…」
あの男のしたことと言ったら。
そう。ローが麦わらの一味に攻撃したのも、やっぱり間違いじゃなかったの。
そして、彼の能力のせいで、今麦わらの一味の中身と体がアベコベに入れ替わってしまっているらしい。
チョッパーがイカつい顔をしていたのは中身がフランキーだからで、フランキーが可愛らしかったのは中身がナミだから、みたい。
さらに、サンジかと思っていたのは実は中身はチョッパーで、そして…。
この辺りであたしは頭が痛くなって考えるのをやめた。
初めて会う人たちばかりなのに、その中身が別の人だなんて、そんなの覚えられるわけがない。
周りもそれなりに大変だけど、もちろん一番困ってるのは当の本人たちで。
だから、フランキー…いや違う、ナミが、
「ほんとあの男許さないんだから!」
と拳を握りしめるたびに、あたしは頭が上がらなくなるのだった。
よくよく考えたら、ローのしたことにあたしが負い目を感じる必要なんてこれっぽっちも無いんだけど、なぜか代わりにあたしが謝らないと、という気持ちになる。
たぶん、こんなに困ってる彼らに対してもローが絶対に謝らないことが目に見えているから。
あの人が、「なんでおれが謝らねェといけないんだ。…お前らがここに居るのが悪いだろ」ってしれっと言い放つ姿が今から想像できる。
あたしは内心ため息をつきながら、肩身を狭くして彼らに謝るのだった。