第2章 旅立ち
突然、後ろで草木を掻き分ける音がした。
「おい!ライ!いたぞ!」
悪ガキの1人トービンの声。
はっと振り返るけどもう遅い。
後ろからさらに2人の影が追いついてくるのが見えた。
見つかった!最悪だ。
ぼんやりしてる場合じゃなかった。
あたしはバネのように飛び上がり、脱兎のごとく走り出す。
自慢じゃないけどあたしの足に勝てるやつなんて教会にはいない。だから、本気で走ればいつでも逃げ出せる。
…それは、予想外の出来事さえ起こらなければ、の話なんだけど。
必死に左右動かしていたはずの足が、何かに絡まる。
──植物のツタだ。
はっと気づいた時にはもう遅かった。
見事につんのめって、あろうことか顔面から倒れ込む。
そして、
「いったーーーい!!」
ツタや木の根っこでボコボコした地面に、顔と手足を強かに打ちつけたのだった。
い、いたい。
なんで手をついたのに顔、ぶつけるかな。
膝も擦り切れて血が出てる。
真っ赤な血を見ると頭がくらくらした。
うぅ…泣いちゃだめだ。
またからかわれる。
涙も痛みもぐっとこらえてツタを払っていると、これまた最悪なことに、後ろからパタパタと近づいてくる足音。
「お前またこけたのかよ!」
「だっせーー」
「顔泥まみれになってやんの」
あぁもう、散々だ。
あたしは涙が落ちないように必死にこらえて、キッと3人を睨む。
「あんたたちが追いかけてくるからころんだんじゃないの」
「はぁ?お前がこけるのは今に始まったことじゃねェだろ」
「そうだそうだ。いっつも1人でこけてるじゃねーか」
う、うるさい!
そう言われると何も言い返せなくて、苦し紛れにぶちぶちとツタを引き抜く。