第2章 旅立ち
──ローに初めて会ったのは10歳の時だった。
「さいっていよ、あいつら」
ライを筆頭とする教会の悪ガキ3人組にいじめられて逃げ込んだ森の中。
鬱蒼と茂る木々にまぎれて、じっとヤツらがいなくなるのを待つ。
別に怖いわけじゃない。
人数が多いからちょっとやっかいなだけよ。
半ば自分に言い聞かせながら、木の根本にうずくまってじっとしていた。
その森は、教会から子供の足で15分ほどのところにあった。
一見危ないようには見えないけど、途中から深みが増し、10分も歩くと生い茂った葉っぱによって光が遮られ、辺りを照らさなくなる。奥まで入ると昼間でもかなり暗い。
夜になると獣たちも動き出して余計に危険だから、子供は近寄ってはいけないと小さい頃から教え込まれて育つ。
だけど、だからこそ、ことあるごとに悪ガキどもに追いかけ回されるあたしにとっては絶好の逃げ場所になった。
初めのうちは、ここに逃げ込むと奴らは追うのをやめて大人しく教会に戻って行った。夜になる前にこっそり戻るとシスターにも怒られない。
うまくやり通す方法を見つけたと喜んでいたの。
なのに。
回数を重ねるごとにこの手が通用しなくなり、最近では悪ガキどももこの森の中まで入ってくるようになったのだ。昼間はそんなに危険じゃないことに気づいたらしい。
「せっかくの逃げ場所だったのに…」
だから今はじっと足音が無くなるのを待つしかない。
暗い木の根っこに身を埋めるようにして縮こまってるとなんとも惨めな気分がした。
なんで、あたしがこんな目に。