第11章 疑惑の研究所
モチャが泣いているのを見ると、教会にいる妹や弟たちを思い出した。
あたしが何も言わずに出て行って、あの子達には訳分からなかっただろう。
ローに置いて行かれて泣いていたあたしが、あの子たちに全く同じことをしている。
そんな思いがずっと心の奥にあって。
だから、目の前で泣くモチャを見ると、どうしても放って置けない気持ちになるのだった。
あたしのせいで泣いてるわけではないのに、罪悪感にも似た思いが芽生える。
「ほんと…?」
モチャは涙をいっぱいに溜めた目をパチパチと瞬かせて、あたしを見上げ…いや、見下ろした。
「もちろんよ、行きましょ!」
あたしは元気付けるように笑顔で答えると、モチャの手を取る。
どっちに行けばいいのか分かんないけど、とりあえず歩いてきた方へ引き返してみようと思った。
もうあの無機質な部屋に戻る気にもなれなかったけど、いや、戻る方法すら分からなかったけど、何となくこっちのような気がして。