第11章 疑惑の研究所
さらにいくつか角を曲がり、あたしはようやくその泣き声の人物に対面した。
思った通り、それは小さな子供だった。
いや、"小さな子供"…に見える大きな子供だった。
「え!?」
顔立ちは7歳かそこらの女の子。
だけど、体はあたしよりうんと大きいの。
あたしはぽかんと口を開けてその大きな子供を見上げる。
「おねぇちゃん、だぁれ?」
子供もあたしに気付いたようだった。
泣き止むのをやめて、あたしをじっと見ている。
「あたし…あの、ここの人じゃないんだけど。あなたの泣き声が聞こえたから見にきてしまったの。…どうして泣いてるの?」
「お友達がみんないなくなっちゃったの…」
「友達?」
「そう。みんなでビスケットルームで遊んでたのに、モチャがおトイレに行ってるあいだに、みんないなくなっちゃってたの!!」
そう言ってまた泣き出す子供。
この子はどうやらモチャと言うらしい。
あたしは具合が悪いんじゃなくて良かったと、とりあえずほっと胸を撫で下ろした。
こんなに大きな子供がいるなんて知らなかったけど、あたしが知らないだけで世界にはこういう人種もいるんだろう。
あたしはそう納得して、モチャに声をかける。
「みんなはビスケットルームに戻ってきていないのね。わかった。じゃあ、おねぇちゃんと一緒にお友達を探しに行きましょう」
言いながら、またあの冷たい目を思い出して背中に悪寒が走るのを感じた。
だけど、あたしは頭を振ってその残像を追い払う。
だって子供が泣いてるんだもん。
放って置けるわけがないじゃない。