第11章 疑惑の研究所
しばらくの間、ローと話した内容についてつらつらと考えていたけど、あたしはふと顔を上げる。
やっと再会の衝撃から立ち直って、いろいろと考える余裕ができてきた。
さっきローは、おれが戻ってくるまで待ってろって、そう言ったけど、果たしてそれはいつなんだろう。
あたし、いつまでここで待ってればいいの。
一回そう思ったら、具体的にいつまでと知らされていない状況が急に不安になる。
辺りを見回して、そう言えばここは何の部屋なんだろうなんて考え始めていた、その時。
「ーーーーーヮァーー…ーーー…」
しんと静まり返った部屋に、何かの音が響いた。
一瞬聞き間違いかと思ったけど、そうじゃない。
音…いや、声?
だんだん近づいてくるその声に、耳を澄ませて。
「ーーーウーヮァーー…ーンーー…」
そしてあたしは気付いた。
「子供の泣き声…?」
そう。それは、こんな不穏な研究所に不似合いな、幼い子供の泣き声だった。
出ていくなと言われてからあまりにも時間が経っていなかったから、さすがのあたしも少し躊躇った。だけど、結局、壁に手をついて立ち上がる。
ローの言葉より、どこの誰かもわからない子供の悲痛な泣き声の方があたしの胸に響いた。
もしかしたら、怪我してるのかもしれない。
どこか具合が悪いのかもしれない。
そう思ったら、居ても立っても居られなくなって。
「様子を見に行くだけ。それだけなんだから…」
あたしは半ば自分に言い聞かせるようにして、そっとその部屋を抜け出した。