第11章 疑惑の研究所
ほ、本当に1人にされてしまった。
こんなよく分からないところで1人っきり。
急に心細くなって、あたしは部屋の隅っこで膝を抱えた。
ずっと1人で旅してきたくせに、今更1人が寂しいなんて変な話だけど。
何もない部屋で1人座り込んでいると、やっぱり思い出されるのはたった今出て行った彼のことで。
さっきは怒涛の展開すぎて全く感情が追いつかなかったけど、こうして落ち着いて考えてみてようやく頭の整理がついてきた気がする。
あたし、やっと、本当にやっと。
ローに会えたんだよね。
ローが再会についてどう思っているかは分からないけど、少なくともあたしのことを忘れているわけではなかったし、他人のフリをするつもりもないようだった。これは、素直に再会を喜んでいいんじゃないだろうか。
そりゃあ、彼の態度にいろいろと不満はある。
あるけれど、あたしの2年間の苦労も無駄ではなかったということだ。
同時に、それにしても、と考える。
彼は本当に、普通だった。
6年ぶりに会えたことなんてまるで気にしていないかのように。
確かにあの状況では動揺している暇なんて無かったとは思うんだけど、それにしても反応に変化が無さすぎた。
久しぶりのあたしに対しても平気で怒るし、平気で苛立つ。
馬鹿にしたような口調で話すし、挑発するように笑う。
彼はどこまでも、トラファルガー・ローだった。
それに対してあたしは…。
動揺して赤くなって、怒ってる彼に言い訳ばっかりして。
…はぁ。
これは経験値と器の差なんだろうか。
それとも、惚れた弱みってやつ?
あたしは1人でそんなことを思って情けなくなるのだった。