第11章 疑惑の研究所
それなのに、目の前で余裕気に笑う男はこんなあたしの感情なんて、これっぽっちも気にしてないんだから、ほんと嫌になる。
それと同時にだんだん腹も立ってきた。
ずっと追いかけてきた人にあんな風に一言で片付けられて、あたしだって文句の一つも言いたくなるよそりゃ。あたしの2年は何だったの。
もう、傷ついてもいい。
今すでに傷ついてるんだから、これ以上がなんだ。
それより、この人に問い詰めないと気が済まない。覚えてるなら覚えてるで、もっと言い方があるでしょうに。
あたしは顔を上げて、ローをきっと睨みつけた。
「…昔の知り合いってなによ」
ローは突然睨むあたしを怪訝そうに見つめる。
「そのままの意味だが。お前はウチのクルーじゃねェ上に、ここ数年会ってなかったろう。…他に言い方があるか?」
そんな顔、しないでよ。
そんな、何でもないことのように。
…あなたの一言でどれだけ落ち込んだと思ってんの。泣きそうだったのよ、あたし。
彼が特に何も考えずにその言葉を使ったことはよく分かった。
ついでに、やっぱりあたしが本当にそれ以上でも以下でも無かったってことも、ね。でも思ったより傷ついてない。
ローの言葉ひとつで一喜一憂してるのがバカらしいと思う気持ちが勝ったみたい。
あたしはふぅと息を吐き出した。
「…今は、ね」
そして、思いっきり睨んでやる。
この分からず屋で、鈍感な男を。
「今は"昔の知り合い"かも知んないけど、これからどうなるか分かんないんだから!」